大阪・靱テニスセンターで今週開催された「大阪市長杯 世界スーパージュニア」(本戦10月12~18日)は本日が最終日。注目の日本人対決となった女子シングルス決勝は、16歳の本玉真唯(日出高校)が14歳の内藤祐希(長岡市TA)を6-1 7-5で下し、2007年の奈良くるみ以来、8年ぶりの日本人女子チャンピオンの座を手に入れた。
大阪・靭テニスセンターには多くのテニスファンが詰めかけた
少なく見積もっても3000人は入っていただろう。最終日のセンターコートは驚きの賑わいだ。そこに立つ二人の主役たちにとってそれは初めての体験だった。どちらがより平常心を保つことができるか、それが16歳と14歳の日本人同士の決勝戦を左右するカギだったに違いない。
お互いに相手が緊張していたのはわかったという。ただ、序盤の展開が両者の緊張感の度合いに差をつけた。
第1セット第2ゲームの内藤のサービスゲーム。内藤はフォアハンドのクロスのウィナー2本とエースで40-0としたにもかかわらず、ミスを重ねて5ポイントを連続で失った。
もともと、低く滑ってくるボールが苦手だという内藤だが、本玉はまさにそのタイプだ。ここまでの試合は非常に高いディフェンス力を発揮していた内藤だが、苦手意識に焦りが重なり、守っても攻めてもうまくいかない状態に陥ってしまった。
「単調な打ち合いにならないように、ドロップとかいろいろなショットを混ぜていきたい」と話していた内藤だが、「返すのに必死でそこまでできなかった」と振り返る。
第1セットは本玉の6-1。しかし好調に見えた本玉のほうも、実際はそうではなかったという。
「相手のミスが早いこともあって、自分のペースがつかめていなかった」。それはスコアにも表れ始め、第2セットは3-1から3-5と逆転された。内藤のペースに自分がつき合わされている印象を受けた本玉は、3-3にされてからはふたたび自分から攻めるテニスを心がけた。
「結局3-5になっちゃったんですけど、そこまで段階を踏んでたので焦らなかった」と、そこから4ゲームを連取。最終セット突入を許さなかった。
会心の勝利かと思いきや、「まだこのレベルで優勝するような力は自分にはないと思った」と本玉。小学校高学年の頃から折りに触れて指導をしてきた山岸依子コーチは「真面目な子なんです」と語る。
「例えば勝ったときに何かご褒美をと約束していて、勝っても『納得できるプレーじゃなかったのでご褒美はいりません』と自分から言ってくるような(笑)」
だから、今日もご褒美は自ら放棄。しかも、優勝の余韻を楽しむ間もなく、来週タイで行われる大会のために今晩飛び立つという。この大会よりも格の低いグレード2の大会だ。「来週はしっかり自分のテニスをして優勝したい」と話した。
優勝した本玉真唯(左)と準優勝の内藤祐希(右)
浮かれていない本玉の姿には感心するが、この大会を観に来る大阪のファンにも毎年感心する。女子決勝が終わっても、男子決勝を見ずに帰る観客はいなかった。第3シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)と第4シードのマテ・バルクス(ハンガリー)という、おそらく名前を聞いたこともない選手の決勝である。しかし、スタンドは純粋に10代の彼らのプレーを楽しみ、大いに沸いていた。そして試合後は、子供や学生が中心になって大興奮のサイン攻めだ。この現象は世界でも珍しいから、ここで優勝したことのある選手は誰もがプロになってもこの大会での経験をうれしそうに振り返るのだ。
キャスパー・ルード(ノルウェー)
残念ながら試合のほうは、一方の体調不良で簡単に片がついてしまった。第1セット終盤まで緊迫した展開だったが、バルクスが熱中症に似ただるさや目眩に襲われ、そこからはルードの一方的展開。6-4 6-0で16歳のルードがグレードAでの初タイトルを手にした。
おそらく手がしびれるほど書いたであろうサインの価値は、近い将来高騰するだろうか。そうなることを願おう。
優勝したルード(右)と準優勝のバルクス(左)
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)