4月9日から12日までの日程で、名古屋・東山公園テニスセンターと瑞穂公園テニスコート(共に砂入り人工芝)で開催されていた16歳以下の大会が「MUFGジュニアテニストーナメント」。かつては「トヨタジュニア」として知られた大会で、男女ともにシングルスは64ドローでの開催となっている。
12日の土曜日に行われた女子決勝は、東山公園テニスセンターのセンターコートで実施され、第4シードの清水綾乃(高崎テニスクラブ)が第1シードで出場の小堀桃子(J.S.S)を6-3 6-4で破って優勝した。この二人は昨年の全国中学に続く対戦だったが、今回も清水に軍配が上がった。
好天に恵まれた名古屋地方。午前11時に女子決勝がスタートした時点では風もそれほど強くなく、心地よい程度の気温。最高と言っていい環境での決勝となった。
序盤はお互いにやや硬さが見られる中でブレーク合戦となったが、第4ゲームで先にサービスキープに成功して抜け出したのは清水で3-1とリードした。その後はお互いにキープが続いて5-3で迎えた第9ゲームで再び清水が小堀のサービスをブレーク。6-3で第1セットを取って清水が先行した。
清水のスイングが徐々に鋭さを増し、セットの中盤以降の彼女のボールにはスピードと重さが加わっていったが、小堀はそれに押されたのか、食らいつきはするものの清水を崩すには至らず、そのままズルズルとセットを取られてしまった印象だ。
最後まで粘り強く戦った小堀だったが、清水の球威に押し切られた。
第2セットに入って小堀は清水のサービスを攻撃するべく、ややポジションを前にしてリターンし始めた。効果が感じられたポイントも少なくなかったが、清水を崩し切るには至らず、ラリーでは清水に押し込まれ、左右に角度をつけられて走らされた。清水が球威で小堀を封じ込んだと言っていいだろう。
第6ゲームで清水がブレークに成功。 4-2とリードすると、小堀はややメンタルが落ちたようだった。小堀はそれでも何とか粘ろうとしていたが、序盤から走らされた分だけフットワークがやや落ち始めており、ブレークチャンスを握っても前目にポジショニングしてライジングで打ち粘り、攻撃の手を緩めなかった清水を相手に最後のポイントが取り切れず、そのまま振り切られてしまった。
打球技術やフォームのきれいさだけで言えば恐らく、小堀のほうが上回っているように見えたが、強いボールを作り、それで勝負する展開を作るという勝負の感覚では清水のほうが上回っていた。そんな試合だったと言ってもいいのかもしれない。
清水は決勝進出を決めた昨日の準決勝でもそうだったが、優勝を決めた瞬間も特に喜びを表情に出さず、淡々と試合結果を受け入れていた。派手に叫んだり、ガッツポーズを繰り返すなど感情を表に出すジュニアも多いが、彼女はそれとは正反対の控えめなタイプの選手だ。
「優勝できたのはいいが、準決勝より内容はよくなかった」と試合後に話したのは清水。その理由はサービスの不調だという。「昨日はファーストサービスが入って、ラリーも自分から展開していけたが、今日はファーストの確率が悪く、セカンドを打たれてからのスタートになることが多かった。打たれるから守りに入ってしまい、苦しい試合だった」と清水は反省点を口にした。
というのも、砂入り人工芝の大会以外ではなかなか思うように結果が出せておらず、「ハードコートでも勝てるようになるためには、サービスをもっと強くしないといけないし、リターンも攻撃的にいけるようになりたい。オムニだとロブが叩けるし、滑って取れたりするが、ハードコートではそういうテニスができない。平面的な展開だけでなく、緩急をつけたテニスをしていきたい」という多くの課題を清水自身が克服しなければならないと強く感じているからだろう。
目標通りに優勝した直後には、すぐに次の課題を考え始めるあたり、成長期の選手ならではというところだが、「打っていくのが自分のテニス。今日の試合でも、それはできたかな」と笑顔を見せてくれた表情には、16歳らしい屈託のなさも感じられた。
決勝を戦った二人は、すでにジュニアフェド杯のメンバーに選ばれてもいるが、同時に今大会の「副賞」である海外遠征のメンバーにも選ばれた。
「海外遠征はあまり行ったことがないので楽しみ」と清水は話してくれたが、清水はもちろん、準優勝の小堀も非常に高いストローク力を持っていて、ポイントを作る感覚もある。しかし、海外に出れば、より大きく、そしてパワフルな同世代の選手たちが目白押しで、さらにクレーや芝など、日本では経験しにくいサーフェスでの大会もある。過去の多くの先輩たちも一度はその壁にぶつかったが、それらを跳ね返せた選手だけがトップクラスまで上り詰めていった。
この大会の優勝は、彼女たちにとって最初のキッカケにすぎないが、清水の口ぶりを見ていれば、すでにそういう自覚はありそうで、それにはどこか頼もしい感じもある。「身体は小さくても、メンタルが強く、最後まで油断できない強さを持つ」と、世界でも独特の地位を築いているのが日本女子の伝統。彼女たちの今後の成長に期待したい。
優勝の清水綾乃
準優勝の小堀桃子
※トップ写真は清水綾乃
(TennisMagazine/ライター・浅岡隆太)