セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は歴史から逃れるのを止め、それに向かって動き始めた。
2年前までは、あらゆる記録に関することに耳を貸さなかった彼女だが、全米オープンを前にした今では、オープン化以降では2番目の記録となる18度目のグランドスラム制覇が目標だと声を大にしている。
「クリス(エバート)とマルチナ(ナブラチロワ)の記録に近づけるように頑張りたいというのは確か」とセレナは話す。
そして彼女はこう続けている。「でも、そのために1年間戦ってきたわけではないし、まだ達成できてもいないこと。それでこれ以上ストレスを抱え込みたくないわ」とも付け加えている。
セレナは昨年の全米で17勝目を挙げて以降、足踏みを続けている。2012年半ばにコーチのパトリック・ムラトグルー氏と活動を始めた彼女だが、彼は記録への挑戦をセレナに促した。以来セレナは6つのグランドスラムタイトルを追加し、五輪での金メダルを獲得。2年続けてWTAツアー最終戦を制してきたのが、この16ヵ月の出来事だ。
しかし、今季のグランドスラムではまだベスト8にも進めていない。ウィンブルドンのダブルスではウイルス性疾患の影響で不可解な敗戦を喫している。
セレナが最初の目標とするのがエバートの記録で、セレナはさらにシュテフィ・グラフ(ドイツ)の22勝(オープン化以降のグランドスラム最多勝)を目指すことになる。
エバートが18度目のグランドスラムを制したのは彼女が31歳だったときだ。セレナがその年齢だったのは2013年の全米。シーズンごとにメンタルの維持は困難になっていく。
「フレッシュな状態でなくなっていくのよ」とエバートは言う。「時にはベッドから出たくなくなる日だって出てくるのよ」。
現在もセレナは全米オープンの極めて有力な優勝候補。セレナは1968年のオープン化以降ではまだエバートしか存在しない、全米3連覇を目指している
セレナが第1シードで全米オープンに出場するのは今回が3度目。この少なさは204週間のナンバーワン在位記録を持つ彼女にしては驚くべき数字だが、過去の2回でのセレナはきっちり優勝を果たしている。
今季のWTAツアーでは最多となる5度の優勝を挙げているのがセレナ。2位以下は3勝止まりだ。過去7度のグランドスラムの内の5度は、セレナが勝てていない大会だったが、その5大会ともに異なった選手たちが制していて、内2人が今年の全米には出場しない。一人は故障欠場のリー・ナ(中国)で、もう一人が引退したマリオン・バルトリ(フランス)だ。
5度のグランドスラム優勝の実績を持つマリア・シャラポワ(ロシア)にとっては、この空白のような状態はチャンスだが、彼女は6月に2度目の全仏制覇を果たして以降はシャープさを欠いている。
ウィンブルドンを制したペトラ・クビトバ(チェコ)だが、彼女は全米では毎回苦戦しており、ベスト8に進出したことすらない。2011年にウィンブルドンに優勝して迎えた全米では、1回戦で敗退していた。
この2年、セレナと決勝を戦ってきたビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は故障のため今季を通じて状態がよくない。
このような状況は、近年の女子では珍しいことではなく、男子の状況も似た感じになっている。ラファエル・ナダル(スペイン)が手首の故障で出られず、トップ選手たちもらしくないプレーを見せて苦戦が続いている。
ウィンブルドンを制したノバク・ジョコビッチ(セルビア)はその直後に結婚。「今は感情面がフラットになっている」と最近のハードコートの大会で早期敗退を喫した後に話している。
「少しスローになっている、と言わないといけないね。早く試合モードに入らないといけないと思う」とジョコビッチ。「ここ5、6週間は今までにない体験が続いていたんだ。結婚式を挙げて、ウィンブルドンで優勝し、ナンバーワンに返り咲いた。これ以上はないという感じだったんだよ。もうお腹いっぱいという感じだったし、これ以上に幸せな状態はないという感じだったんだよ」。
アンディ・マレー(イギリス)は腰の手術からまだ自分のプレーを取り戻せていない。また、おそらくは33歳のロジャー・フェデラー(スイス)にとってはグランドスラムタイトルを追加する最後で、最高のチャンスとなるだろう。この2年以上17勝で足踏みをしているのが彼の記録で、セレナと数字では並んだままとなっている。(C)AP
Photo:In this photo provided by CBS, Serena Williams talks with host David on the set of the “Late Show with David Letterman,” Thursday, Aug. 21, 2014, in New York. Williams will compete in the U.S. Open which begins on Aug. 25. (AP Photo/CBS, John Paul Filo)